休日だが意外と混んでなく、、車もある程度快適に走れる。車は水上温泉街を抜けると月夜野
(つきよの)に入った。
国道沿いにあるガラス工場に立ち寄った。ガラスの製造過程を見学の後、美佳のにとってはお
楽しみの【買い物】が待ちかねている。やはりあれこれ見ては買っていった。
「これだから女は……お土産には弱いから……」友之はつぶやいた。
次に立ち寄ったのは舞茸(まいたけ)農場だ。友之は試食があると言うからだと言う。しかしここに
も友之のこだわりがあって、以前会社の慰安旅行で伊香保(いかほ)に行った時に立ち寄った店で、その時試食した味が忘れられなくて再び立ち寄ったのだ。さっき立ち寄ったガラス工場も慰安旅行の時に休憩した場所でもあった。
「ただで食べれるから来たんじゃないのか?」
美佳はつぶやいた。けどそれも半分当たっているので友之は返す言葉がない。もっとも友之は2袋も買ったし相当病み付きになったに違いない。
友之は「これから毎日バター焼きにしてくれ」とせがんだ。
「舞茸はおいしいから私も好きだけど、作る私の身になってほしいものだよ!」と答えた。
家に帰るには時間が十分あるのか車は伊香保方面を進んでいる。美佳としてはもう一度温泉に入りたい気分だ。温泉が好きな友之だからきっと伊香保温泉も入るに違いないと思ったからだ。
けれど車は温泉地に入らず脇道に入った。美佳が不思議に思っていた矢先、昼だということで着いた先はうどん屋だった。全国的に有名な水沢うどんが伊香保にあるという。
友之がネットで調べたおいしい店を選んだというだけあって、そこで戴いたうどんは普段食べるうど
んと歯ごたえがまったく違い、とてもおいしかった。
久しぶりにおいしいうどんを食した後、2人は案の定伊香保の日帰り温泉に向かった。温泉街の近くにあるのだが周辺は静かで温泉としてもいい雰囲気だった。
相変わらず友之は1時間以上温泉に浸かっている。そんなに長湯好きではない美佳は温泉を出る
と一足先に着替えて付近を散策した。
温泉街までもそう遠くないので行ってみたが、温泉街の入り口に小さなバスセンターとロープーウ
エー乗り場とホテルが数件あるくらいだ。バスセンターの脇にある看板を見ると、TVなどで時折紹介
される【伊香保温泉石段街】は少し距離があるみたいだ。
美佳は道路を登りきればすぐに石段があるのだと思っていたが少し失望した。
(またの機会にしましょ)と思い、引き返した。
すると日帰り温泉の手前に温泉饅頭の店があったので有無を言わず入った。和洋問わず甘いものが好きな美佳は一人で食べる用にとかなり大きな温泉饅頭セットを買って店を出た。伊香保温泉の散策を終えた美佳は日帰り温泉に戻ったが、友之は相変わらず休憩室でスポーツ新聞を見ながらごろごろしている。
「本当に今回の旅行は友之にとってはゆっくり風呂入ってごろごろしているだけだね」とつぶやいた。
けど美佳にとっても久しぶりの温泉の旅なので特に文句は言えなかったけど。
日も沈みかけ、温泉以外に特に行くあてもないので3時過ぎに山崎夫妻は伊香保を後にした。道路は意外にもすいていたので行きとは違ってスムーズに高速道路を走る事ができた。
二人が住む東京郊外の町に着いたのは6時を過ぎていた。
「今から夕飯作るのは面倒だから今日は外食にしない?」と頼んだら友之は納得した。二人を乗せた車は駅前のレストランに入った。
夕飯を食べマンションに着いたのは8時ごろだった。けれど今度の温泉旅行は本当に楽しかった。
美佳の思い出がまた一つ増えた。
寝る前に美佳は友之に、
「またいつか温泉旅行に行きたい」とさりげなく友之にねだった。
友之は半分笑いながら、
「また金がたまったらね。そして今度からは電車で行こう」と軽くあしらわれた。
(やれやれ、【我が家の総理大臣】には勝てないな……)と美佳は思った。
【続く】
参考資料:エリアガイド・関越自動車道
参考サイト:月夜野びーどろパーク http://www.vidro-park.jp/tsukiyono/
群馬舞茸センター http://www.maitake-center.co.jp/
水澤うどん http://www.osawaya.co.jp/