第 2 章  ハプニング
 3月末のある日、友之はいつものように会社に出勤した。
 美佳は自分の為に取っておいたゼリーを冷蔵庫から取り出した。一人至福の時間を楽しんで
いると、突然電話のベルが鳴った。
(こんな朝早くに誰かな……?)と思いながら電話に出た。
 友之からだ。普段は電話などかけてこないのだが……と思い聞いてみると、
「今日バス停に行ったら【スト決行】でバスが運休していたんだ!」
 少々動揺している感じだった。美佳は、
「で、バスがストだと会社には行けないじゃない?」と話すと、
「そうだな。会社に訳言って出社が遅くなるとこれから報告してみる」
と言った。
 数分後、再び友之から電話がかかってきた。今度は快活な声で、
「会社に報告すると、やはりバス会社のストで出勤できない人が何人かいたので、会社の計ら
いでその様な社員には特別に有給として処理すると言う答えだ」
 車で行けばいいじゃないかとお思いの方もいるでしょうが、友之の会社は西新宿の高層ビル
の中にあるので車通勤では不可能だからである。
 それを聞いて美佳はほっとした反面失望もした。
 何しろ【午後のお楽しみ】(と言ってもTV見ながらごろごろしているだけだが)ができないからだ。
 まあ、主婦でいる以上は【楽しみ】は毎日できるのだから、一日くらいは我慢できるのだが。
暫くして友之が自宅に戻ってきた。友之はどこか安堵の気持ちが顔からこぼれている。
 確かにサラリーマンは毎日会社で働いているので、例え一日でも休みになれば嬉しいものだ。
 友之は出不精なので、休日はたいてい家でTV見たりインターネットをしていたりしている。
(まあ、毎日一生懸命働いているから、たまにはゆっくりさせてあげないとな……)と思った。
お昼。いつもは1時過ぎの遅い昼食で、買いだめしてあるうどんや菓子パンなどで済ませている。
 しかし毎日12時きっかりに会社で昼食を食べている友之にとっては、いつもの習慣通りにしない
と気がすまない。
 美佳は引っ越す前に買い置きしておいたカップラーメンを開けた。
「賞味期限が来月までか……ま、大丈夫でしょ」とつぶやきながらお湯を注いだ。気を利かしてゆで
卵を切ってラーメンの上に乗せた。
 カップラーメンを友之に食べさせると、
「最近のカップラーメンはおいしくなったな」との一言。
「そうよ。結構色々買っているから。このラーメンも前食べておいしかったからスーパーの特売時に
何個か買っておいたの」
 美佳は意外とラーメン通だったのだ。更にカップラーメンをおいしく食べる術を知っていたのだ。
 友人から聞いたり独自で考案したりして、出来上がったカップラーメンに炒めた野菜を乗せたり、
隠し味にごま油やバターを入れる等しているのだ。
「この努力を普段の夕食のおかずでも発揮すればいいのに」と友之はつぶやいた。

 午後、美佳は近所のスーパー「スーパー大川」に買い物にでかけた。
本当はもっと遅くに行くのだが、【午後のお楽しみ】ができなくなったので、久々に早めに買い物に行
く事にした。
 山崎家は、結婚当初のアパートでは近くにスーパーがなかったので、一週間に一回、車で10分の
ところにある大手スーパーで一週間分の食材を買いだめしていたのだった。
 今度のマンションに引っ越してからは、近所に個人経営のスーパーがあった。店はこじんまりとし
ていて値段は大手スーパーよりもやや高めだが、家から近いので美佳は2.3日に一回その店で食
品を買い物しているのだ。
 美佳はマンションから自転車で2.3分の所にある【スーパー大川】に着いた。
 やはり自宅から近いと買い物が楽だ。
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