大都会の秘密基地   「書き込み寺」第23回企画参加作品 お題・現存する建物
 都内に住む中学2年生3人組。同じ町内に住んでいて、幼稚園の時からの幼なじみだ。別のクラスだが、3人とも同じサッカー部に所属している。
 中学生でありながら、学年の中で一番子供っぽいグループであり、小学生の頃から名乗っていたグループ名【フェニックス団】を未だに名乗ってる。
 2007年9月8日、土曜日。
 部活終了後、メンバーの中で一番行動力がある長島知樹が、リーダーの青木翔太と団員の戸崎純に、
「昨日インターネットを見ていたら、隣町に広い公園が新しく出来たと言う情報を見つけた」
 と報告し、長島は情報が掲載されたホームページを印刷した何枚かの紙を見せた。
 そこには建物の屋上を公園として整備し、都会にある貴重なスペースを有効活用している事が書かれている。その公園に行った人のコメント欄もあり、最近出来上がったばかりなので地元の人にも知られていない穴場だと言う事らしい。
「地図が書いてあるが、この場所は埼玉県にある。学校から少し遠いけど、行って行けなくない距離だな」
「ホームページの一部分を見ただけだが、何となく良さそうな所だ。……よし、明日皆で遊びに行こう」と言い、早速その公園に行く事が決まった。

 翌日の午後一時。フェニックス団一行は中学校の校門前に集合し、長島が見つけたと言う公園に向けて自転車をこぎ始めた。
 途中コンビニに立ち寄ってペットボトル飲料とお菓子を買って一休みしながら進む事30分、一行は公園に到着した。そこは一般的な公園とは少し違っていて、平屋建ての大きな建物の屋上部分が公園になっているのだ。スーパーマーケット等で屋上を駐車場にしている所は多いが、屋上を公園としている所は珍しい。
「まるで【天空の公園】だ……」
 アニメオタクの青木は、彼が生まれる前に封切られた古いアニメ映画を思い出した。数年前にテレビで見た事がある作品なので、作品のあらすじは覚えているらしい。
 公園に続く緩やかなスロープを登り、綺麗な天然芝の緑が3人の目に入るや否や、
「凄く広い! 」と青木。
「綺麗だ! 」戸崎も感動した。
「やはり噂通りだった! 」情報提供者の長島も、予想以上の規模と利用客の少なさに満足だ。
 3人は早速自転車を置き、芝生の中に入っていった。
 青木が自宅から持ってきたサッカーボールを広い公園内で思いっきり蹴飛ばすと、他の2人は一目散に駆け出す。
 日曜であるにもかかわらず知名度が低いのか利用客が少なく、まるで3人の貸切状態だ。学校の校庭や近所の公園では満足にサッカーのように思い切りボールを蹴る事が出来なかったので、ここは3人にとってまさにうってつけの場所だ。
 自転車で30分かけてここに来たのにもかかわらず、3人とも元気だが、疲れは隠せないみたいで、15分もしないうちにボールを追いかけるのを止めてしまい、
「……疲れたから少し休もう……」
 青木は芝生の上に寝転がった。
長島もリーダーに追随して走るのを止めて芝生の上に座った。
 しかしバツが悪いのはボールを追いかけていた戸崎で、2人の行動に気づかず転がっていくボールを追いかけていくうちに、公園の隅のほうに行ってしまったのだ。
 するとボールは隅の塀に当り、跳ね返った弾みで、また違う方向に転がった。そしてボールはたまたま開いていた半開きの扉の中に……。
 扉の中は一階に下りる階段になっている。戸崎は考えた末、なぜここに階段があるのか?と思った。
 2つの仮説が浮かんだ。まず一つは公園利用者用のトイレが階段の下に設置しているのではないか?もう一つの説は、階段の下に駐車場があり、自動車で来た人用の出入り口になっているのではないか?
 戸崎は何の躊躇いもなく階段を降りた。その扉には【関係者以外立入禁止】と書かれていたが戸崎には知る由もなかった。
 階段を下りた戸崎は、階段の踊り場でボールを拾った。そこで階段を上がって2人の元に戻れば良かったのだが、好奇心が旺盛な中学生の戸崎は、更に降りた先は一体どうなっているのか興味が沸くのは当然で、更に長い階段を下り、降り切った先にある細い通路を進んだ。
(きっとその先にトイレか駐車場がある筈だ)しかし彼の予想は見事に間違っていて、トイレも駐車場も無かった。
 そこは幅2mくらいの空間に何本もの鉄の管が張り巡らされていて、奥がかすんで見えるほどの細長い通路がまっすぐ伸びていている謎の所だった。そして所々に今まで見た事の無いような大きな機械が轟音を立てて動いている。
「ここは一体どこなのだろう? 」そう思いながらも戸崎は果てしなく続いている通路を進んだ。
 300m位進むと今まで縦横無尽に張り巡らしていた鉄管や大きな音を立てて動いてる機械が消え、何も無い空間に変わった。さっき歩いていた通路と比べ、コンクリート製らしき床や壁の色が明らかに新しくなっている……。
(最近新たに造られた場所なのだろう)戸崎は、ここは誰も知らない秘密の場所ではないかと考えた。
(それならいっその事……)
 戸崎は通路を引き返し、さっきの階段を上がると青木と長島を探した。すると2人がペットボトル飲料を飲みながら芝に寝転がっているのを見つけるなり、
「さっきまで一体どこに行ってたんだい? 」との言葉。
「急に居なくなったから心配していたんだよ」と長島。
「ごめんごめん、ボールを捜していたら凄い所を見つけちゃって……」
「凄い所? 」2人は不思議に思い、どんな場所なのか興味が沸いてきたのは言うまでも無い。
「これから一緒にそこに行こう! 」青木と長島は快諾し、戸崎はさっきまでいた不思議な空間への道を案内した。
 半開きの扉から階段を下り、狭い通路を抜けると、
「何これ! 変な所だな、それに騒々しいし」
青木は摩訶不思議な空間に辺りをきょろきょろし始めた。
「初めて見る風景だな。埼玉にもこんな地下街があるなんて」さすがに日本国内を家族で旅行している長島だけあって見聞が広い。
 3人は興味津々で通路を進むと、さっきの何も無い広い空間にたどり着いた。
「うわあ! 本当に何も無い! 」生まれて初めて見る不思議な空間に驚き感動していた。
 突然リーダーの青木が、
「今からこの空間を【フェニックス団秘密基地】と命名する! 」
「賛成! 」
「異議なし! 」
 戸崎は壁に、ポケットに入っていた油性のサインペンで、【フェニックス団秘密基地】と書き込んだ。勿論人目につかないように隅のほうに小さく書いた。
大都会の秘密基地   「書き込み寺」第23回企画参加作品 お題・現存する建物
 都内に住む中学2年生3人組。同じ町内に住んでいて、幼稚園の時からの幼なじみだ。別のクラスだが、3人とも同じサッカー部に所属している。
 中学生でありながら、学年の中で一番子供っぽいグループであり、小学生の頃から名乗っていたグループ名【フェニックス団】を未だに名乗ってる。
 2007年9月8日、土曜日。
 部活終了後、メンバーの中で一番行動力がある長島知樹が、リーダーの青木翔太と団員の戸崎純に、
「昨日インターネットを見ていたら、隣町に広い公園が新しく出来たと言う情報を見つけた」
 と報告し、長島は情報が掲載されたホームページを印刷した何枚かの紙を見せた。
 そこには建物の屋上を公園として整備し、都会にある貴重なスペースを有効活用している事が書かれている。その公園に行った人のコメント欄もあり、最近出来上がったばかりなので地元の人にも知られていない穴場だと言う事らしい。
「地図が書いてあるが、この場所は埼玉県にある。学校から少し遠いけど、行って行けなくない距離だな」
「ホームページの一部分を見ただけだが、何となく良さそうな所だ。……よし、明日皆で遊びに行こう」と言い、早速その公園に行く事が決まった。

 翌日の午後一時。フェニックス団一行は中学校の校門前に集合し、長島が見つけたと言う公園に向けて自転車をこぎ始めた。
 途中コンビニに立ち寄ってペットボトル飲料とお菓子を買って一休みしながら進む事30分、一行は公園に到着した。そこは一般的な公園とは少し違っていて、平屋建ての大きな建物の屋上部分が公園になっているのだ。スーパーマーケット等で屋上を駐車場にしている所は多いが、屋上を公園としている所は珍しい。
「まるで【天空の公園】だ……」
 アニメオタクの青木は、彼が生まれる前に封切られた古いアニメ映画を思い出した。数年前にテレビで見た事がある作品なので、作品のあらすじは覚えているらしい。
 公園に続く緩やかなスロープを登り、綺麗な天然芝の緑が3人の目に入るや否や、
「凄く広い! 」と青木。
「綺麗だ! 」戸崎も感動した。
「やはり噂通りだった! 」情報提供者の長島も、予想以上の規模と利用客の少なさに満足だ。
 3人は早速自転車を置き、芝生の中に入っていった。
 青木が自宅から持ってきたサッカーボールを広い公園内で思いっきり蹴飛ばすと、他の2人は一目散に駆け出す。
 日曜であるにもかかわらず知名度が低いのか利用客が少なく、まるで3人の貸切状態だ。学校の校庭や近所の公園では満足にサッカーのように思い切りボールを蹴る事が出来なかったので、ここは3人にとってまさにうってつけの場所だ。
 自転車で30分かけてここに来たのにもかかわらず、3人とも元気だが、疲れは隠せないみたいで、15分もしないうちにボールを追いかけるのを止めてしまい、
「……疲れたから少し休もう……」
 青木は芝生の上に寝転がった。
長島もリーダーに追随して走るのを止めて芝生の上に座った。
 しかしバツが悪いのはボールを追いかけていた戸崎で、2人の行動に気づかず転がっていくボールを追いかけていくうちに、公園の隅のほうに行ってしまったのだ。
 するとボールは隅の塀に当り、跳ね返った弾みで、また違う方向に転がった。そしてボールはたまたま開いていた半開きの扉の中に……。
 扉の中は一階に下りる階段になっている。戸崎は考えた末、なぜここに階段があるのか?と思った。
 2つの仮説が浮かんだ。まず一つは公園利用者用のトイレが階段の下に設置しているのではないか?もう一つの説は、階段の下に駐車場があり、自動車で来た人用の出入り口になっているのではないか?
 戸崎は何の躊躇いもなく階段を降りた。その扉には【関係者以外立入禁止】と書かれていたが戸崎には知る由もなかった。
 階段を下りた戸崎は、階段の踊り場でボールを拾った。そこで階段を上がって2人の元に戻れば良かったのだが、好奇心が旺盛な中学生の戸崎は、更に降りた先は一体どうなっているのか興味が沸くのは当然で、更に長い階段を下り、降り切った先にある細い通路を進んだ。
(きっとその先にトイレか駐車場がある筈だ)しかし彼の予想は見事に間違っていて、トイレも駐車場も無かった。
 そこは幅2mくらいの空間に何本もの鉄の管が張り巡らされていて、奥がかすんで見えるほどの細長い通路がまっすぐ伸びていている謎の所だった。そして所々に今まで見た事の無いような大きな機械が轟音を立てて動いている。
「ここは一体どこなのだろう? 」そう思いながらも戸崎は果てしなく続いている通路を進んだ。
 300m位進むと今まで縦横無尽に張り巡らしていた鉄管や大きな音を立てて動いてる機械が消え、何も無い空間に変わった。さっき歩いていた通路と比べ、コンクリート製らしき床や壁の色が明らかに新しくなっている……。
(最近新たに造られた場所なのだろう)戸崎は、ここは誰も知らない秘密の場所ではないかと考えた。
(それならいっその事……)
 戸崎は通路を引き返し、さっきの階段を上がると青木と長島を探した。すると2人がペットボトル飲料を飲みながら芝に寝転がっているのを見つけるなり、
「さっきまで一体どこに行ってたんだい? 」との言葉。
「急に居なくなったから心配していたんだよ」と長島。
「ごめんごめん、ボールを捜していたら凄い所を見つけちゃって……」
「凄い所? 」2人は不思議に思い、どんな場所なのか興味が沸いてきたのは言うまでも無い。
「これから一緒にそこに行こう! 」青木と長島は快諾し、戸崎はさっきまでいた不思議な空間への道を案内した。
 半開きの扉から階段を下り、狭い通路を抜けると、
「何これ! 変な所だな、それに騒々しいし」
青木は摩訶不思議な空間に辺りをきょろきょろし始めた。
「初めて見る風景だな。埼玉にもこんな地下街があるなんて」さすがに日本国内を家族で旅行している長島だけあって見聞が広い。
 3人は興味津々で通路を進むと、さっきの何も無い広い空間にたどり着いた。
「うわあ! 本当に何も無い! 」生まれて初めて見る不思議な空間に驚き感動していた。
 突然リーダーの青木が、
「今からこの空間を【フェニックス団秘密基地】と命名する! 」
「賛成! 」
「異議なし! 」
 戸崎は壁に、ポケットに入っていた油性のサインペンで、【フェニックス団秘密基地】と書き込んだ。勿論人目につかないように隅のほうに小さく書いた。