15、花言葉 「名前と花言葉」
 子供の名前というのは、親が生まれてくる子供に「このように育って欲しい」という願いを込
めてつける場合が多い。もちろんある程度は命名は自由だし、それぞれの夫婦によって考
え方も違うのですべてがそのように名づけている訳ではないのだが……。

 愛知県に住む土井さん一家。この家は園芸農家であり、主に中京圏や関西地方に向けて
花を生産・出荷している。その為か土井さんの家では赤ちゃんが生まれると、代々花にちな
んだ名前を命名しているのである。
 もちろん花に囲まれている生活をしているので花の名前に愛着を感じているからである。
 また最近では母が花言葉にも注目しており、その中からふさわしい名前を選んでつける事
もある。
 その母が今回の話の主人公である土井すみれさん(45歳)である。
 確かに昭和30年代に生まれた人としてはかなり珍しい名前である。そもそもはすみれの家
の畑で初めてスミレを栽培し出荷したときに生まれたので命名したとされている。
当時は花の名前をつける事はあまりなかったので、近所から【かわいい名前】として知られ
ていた。もちろんすみれの父は花言葉にちなんでつけたのではない。ただ単に思いつきでつ
けたのである。
 すみれはすくすく成長し高校に入学し、文芸部に入部した。
 夏休み前に文芸部部長から、
「今度の文化祭では詩集を発行する事にした。夏休み中に各自好きな詩を10篇以上つくって
来るように」という宿題を出された。
「詩か……」すみれは考えた。暫し考えた結果すみれ自身がすばらしい環境に住んでいる事
を再認識した。(うちには【花】があるではないか!)
 自分の家が花の農家だから花には毎日の様に接している。けどただ単に花の美しさ・綺麗
さを現したのでは面白みがない。と思うと別の視線から攻めて行こうときめ、早速図書館に向
かった。
 図書館の園芸のコーナーに行くと花の図鑑や育て方の本とともに【花言葉】の本があった。
「花言葉か・・・」
 すみれはひらめいた。さっそく本棚から取り出すと、自分と同じ名前、【スミレ】の花言葉を見
てみた。
【スミレ】花言葉:愛・誠実・純潔
(そうだったのか……)すみれは感心した。自分の名前にこんな意味があるのか!花言葉の
通りに愛に満ち誠実な生活を送ろうと決意をしたのであった……。
 もちろん彼女はその本を借りて花言葉を参照にしながら宿題である詩を作った。その際にも
(色々な花一つ一つにそれぞれ花言葉があるのだな)と感心したのであった。
それからというものすみれは花言葉の魅力にはまってしまったのであった。
 自分の家で栽培している花、植木鉢で買った花、道端に咲いている花の花言葉を調べては感
心したり意外に思うこともあった。
 そしてすみれは10年後、見合い結婚をし、土井家の敷地内に小さいながらも家を建てた。子
供も2人生まれ、毎日を忙しく過ごしている……。

「お母さんただいま!」
 娘の声が聞こえる。私は目を覚ました。
 すみれはさっきまで茶の間で昼寝していたのであった。時計の針は3時を回ってる。
「お母さんどうしたの?具合でも悪いの?」
 娘の桔梗(ききょう)は寝転がっている母にたずねた。
「いや、なんとなく眠くなって……さっきまで私の小さいときの夢を見ていたの」
「へえ〜。お母さんの小さい頃ってどんな感じだったの?」
「文学少女といえば言いすぎかな……けど本は好きだった。花言葉の本は毎日のように見
ていたな」
「結構ロマンチックな少女だったのね、お母さんって」
「実はあんたの「桔梗」という名前も、長女の「さくら」も花言葉で決めたのよ。【キキョウ】には
「変わらぬ愛」【サクラ】には「優れた美人」という花言葉があるの」
「うわー!花言葉からつけたんだ、私の名前。今とても感動している!」
「あれ、名前の由来を話したの初めてだったっけ?」
「お母さん、素敵な名前を付けてくれてありがとう!」
 そういい残すと桔梗は喜んで自分の部屋に向かった。すみれは自分がつけた名前を娘が気に
入ってくれて本当に嬉しかった。
 もちろん自分の名前【すみれ】も気に入っている。
「本当に花って可憐ね」庭に咲き誇っている花々を見て彼女はそう思った。
今日は太陽の日が燦燦と輝いて外の風が温かい穏やかな日である。そんな中花に囲まれて、
何となくすがすがしさを感じるすみれであった。
【完】
参考サイト:「富谷ネット」より 花言葉 http://www3.ic-net.or.jp/~tuguo/framepage1.htm
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